第16回演奏会 ファミリーコンサート

日時

2022年2月27日(日)開場 13:00 開演 13:30
入場無料・予約不要(未就学児入場歓迎)

会場

たましんRISURUホール 大ホール
東京都立川市錦町3丁目3−20(地図)

プログラム

曲名をタップすると、プログラムパンフレットに掲載していた曲紹介をご覧いただけます。

  • G.ロッシーニ
    ウィリアム・テル序曲

    ウィリアム・テル序曲はとても有名なクラシック名曲の一つで、誰もが耳にしたことのある曲ですが、なぜかアマチェアオーケストラでは取り上げられることの少ない曲です。そして、何となくエピソードとともに人々の記憶の片隅に存在しがちな曲でもあります。英雄ウィリアム・テルが息子の頭上のリンゴを見事弓矢で射貫くシーンとともに記憶している人もいれば、運動会の曲の想い出だった人もいるでしょう。あるいは、映画「時計じかけのオレンジ」の鮮烈な暴力性とともに青春の一部として焼き付けてしまった人も。

    さて、トランペットの華やかなファンファーレで始まる有名なフレーズは、実は「スイス軍の行進」という序曲の一部です。自由を求めるスイスの人々を描く壮大なオペラ「ウィリアム・テル」は、序曲では4つの部分にコンパクトにまとめられています。

    夜明け・・・チェロ5重奏を中心とした始まりの部分です。静かですが、孤高で凛とした雰囲気を感じさせる曲調です。最後はこれからの物語の始まりを予感させ、終わります。

    嵐・・・アレグロにテンポアップし、嵐の到達を予感させる弦楽器の「疾風」のあと、トゥッティー(総奏)による激しい「嵐」が訪れます。嵐の激しさは、圧政に立ち向かう民衆の愛国心と士気の隠喩として描かれます。

    静寂・・・テンポはアンダンテに落ち着きます。イングリッシュホルンによる牧歌的なのどかで美しいメロディーが印象的です。

    スイス軍の行進・・・もっとも有名な部分です。スイスに平和をもたらした国軍の行進と民衆の歓喜が描かれます。冒頭のトランペットのファンファーレが印象的です。

    さて、今回ムジカ・プロムナードでウィリアム・テル序曲を取り上げるのは今回で2回目になります。前回は10年以上前の話ですが、チェロ弾きの筆者は当時のメンバー・指使い・ボーイングなど、昨日のことのように鮮明に記憶に残っています。冒頭に曲と記憶の話を少し書きましたが、チェロを弾く人にとって、もし演奏の機会があれば生涯忘れがたい曲となるのでは、と思わせられる特別な曲です。

  • P.デュカス
    魔法使いの弟子

    交響詩『魔法使いの弟子』はフランスの作曲家、ポール・デュカスが1897年32歳の時に作曲されました。同年デュカス自身の指揮によって初演され大成功を収め、その後今日まで愛されているまさに彼の代表作になります。この曲はドイツの文豪、ゲーテの書いた物語を基にして作曲されました。とてもユーモアに溢れる物語と音楽のマッチングは非常に素晴らしく、多くの人を虜にしました。

    そして作曲から約40年後の1940年、ウォルト・ディズニーによってこの物語と音楽が映像化されることになります。ディズニーが誇るスーパースター、ミッキー・マウスが映画『ファンタジア』の中で物語の主人公である「魔法使いの弟子」役を演じたことで話題になりました。この時の衣装、赤いローブに青い三角帽のミッキーを見たことがある方も多いのではないでしょうか。

    ちなみにディズニーランドのアトラクション「フィルハーマジック」の中で、この『魔法使いの弟子』を聞くことができますよ。また、待合所にはこの曲の楽譜が描かれています。行く機会があれば探してみて下さいね。

    そんな『魔法使いの弟子』の物語を少しだけ紹介しましょう。

    大魔法使いの師匠がいなくなった隙に、若い魔法使いの弟子がほうきに魔法をかけて自分の仕事である水汲みをさせます。仕事をサボって浮かれているのもつかの間、いつまでもほうきが水汲みをやめないために、あたりは水浸しになってしまいます。

    しかし魔法の止め方が分からない弟子は、仕方なくほうきをバラバラに破壊してしまいます。ですが破片の1つ1つがほうきに成長してしまい、無数のほうきたちは再び水汲みを始めます。やがて大洪水となりどうにもならなくなったところに、やっと戻ってきた師匠。師匠の魔法で、ほうきも洪水もアッという間に元通りになりました。結局師匠に怒られてしまう、未熟な魔法使いの弟子なのでした。

    この曲の聴きどころは、なんといってもファゴットが演奏するユーモラスなメロディです。まるでほうきの柄のような見た目の楽器が3本並んで、楽しそうに演奏しているはずです。是非ご注目下さい。

  • B.ブリテン
    青少年のための管弦楽入門

    青少年のための管弦楽入門」は、20世紀イギリスの作曲家「ベンジャミン・ブリテン」が、BBCによる音楽教育映画のために1945年に作曲した管弦楽組曲である。

    「パーセルの主題による変奏曲とフーガ」という副題があるとおり、17世紀後半イギリスの作曲家ヘンリー・パーセルの 劇音楽「アブデラザール、もしくはムーア人の復讐」のロンドの主題を用いた変奏曲が作品の大筋となっている。ヘンリー・パーセルは、イギリスにおけるバロック音楽の大家であり、バロックオペラの最高峰の1つとも称される「ディドとエネアス」や、多くのアンセムなどの宗教曲、そして劇音楽も多く世に送り出したが、36歳という若さで世を去った。

    パーセルの生きた17世紀イギリスは内乱と革命渦巻く動乱の時代であったが、奇しくもブリテンの生きた20世紀前半は、イギリスも含めて世界的な激動の時代であった。幼少期を第一次世界大戦下で過ごし、音楽家として活発に活動していたいわゆる「アラサー」の時期には第二次世界大戦が勃発した。ブリテン自身は、第二次世界大戦が勃発すると良心的兵役拒否により従軍はしなかったが、そのこと自体や、戦後には彼の代表的作品の1つとなった「戦争レクイエム」を発表したことからも窺えるように、この時代の激動はブリテン自身にも少なからず影響を及ぼしたことであろう。

    第二次世界大戦中にもブリテンは意欲的に作曲に取り組み、1945年にオペラ「ピーター・グライムズ」を発表し、同年初演され大成功を収めた。イギリスオペラの名作として知られている作品といえば、この作品と、前述のパーセルによる「ディドとエネアス」ぐらいではないだろうか。もっとも、(大幅な余談であるが)他に意外な人気を誇るイギリスのオペラ(オペレッタ)としては、1885年初演のアーサー・サリヴァン作曲「ミカド」がある。今も昔も批判があり、当時の駐英日本大使も抗議をしたというエピソードもある問題作(?)であるが、現在でも上演機会の多い作品でもある。ご存知ない方は、ぜひ映像作品をご覧頂きたい。念のために補足すると、「ミカド」は、日本風の登場人物によるドタバタ喜劇ではあるが、趣旨としては、当時のイギリス政府を批判的に皮肉る風刺作品であったと言われている。

    さて、話を元に戻して、今回演奏する「管弦楽入門」は、激動の時代が一つの大きな節目を迎えた1945年末に書き上げられ、翌年に初演された。イギリスにおいて偉大な作曲家の筆頭と言えば、当時は(今もかもしれない)ヘンリー・パーセルをおいて他になかったので、パーセルの主題を用いたことは、教育的趣旨の作品であることからしてもベストチョイスだったのかもしれない。

    作品の構成は、主題提示部、変奏部、ブリテンオリジナルのフーガに、最後はパーセルの主題との二重フーガとなり、圧倒的なコーダを迎える。それぞれのパート毎に口頭での説明を挟むか、説明を挟まずに続けて演奏するかは、演奏者の判断に委ねられており、そのことは楽譜にも明示されている。今回はファミリーコンサートであることから、説明のナレーションを取り入れて演奏する。

    主題提示部では、全奏で主題を提示したあと、木管楽器、金管楽器、弦楽器、打楽器という、セクション毎に主題を少しずつアレンジしたフレーズのアンサンブルを演奏し、冒頭の全奏に戻ったあと、次の変奏部へ移る。

    変奏部では、各楽器による変奏が演奏される。大きな特徴の1つは、管楽器やヴァイオリンのように1つのパートが複数パートに分かれている場合に、旋律が細分化され、それぞれの断片を続けて演奏することで1つのフレーズとなるように構成されていることである。

    フーガは2拍子で、変奏部で演奏した各楽器が同じ順番で、しかも次々と転調を繰り返しながらかぶさっていき、全ての楽器が出そろったところでパーセルの主題が加わる二重フーガとなる。この二重フーガは、2拍子のフーガの主題に、その3拍分を大きな1拍とする3拍子のパーセルの主題をかぶせ、しかも、その大きな3拍子の1拍は2分割で動く一方、その1拍分が2拍子フーガの3拍分にあたることから、全く異なったビートのフレーズが同時に演奏されて1つのフレーズを構成するという極めて複雑な構成となっている点が大きな特徴である。このように文字で説明されても、要するにどういうことなのか、わからない方が多いのではないだろうか。筆者も書きながら訳がわからなくなりそうであった。ともあれ、その複雑にして見事な、そしてスリリングな(?)二重フーガをぜひお聴き頂きたい。この二重フーガの後は、畳みかけるようなコーダで締めくくるが、この短い部分にも、(楽譜上はそうなっていないが)変拍子を巧みに盛り込んでいる。

    本作品は教育的な目的で作曲されたもので、その目的の観点だけから見ても非常に精巧である。楽器紹介、セクション毎のアンサンブルとトゥッティのサウンドの違い、フーガ、二重フーガ、変拍子、転調、古典作品(パーセルの主題)など、音楽を味わい楽しみ上での基本的な要素がぎっしり詰まっているのである。これほどぎっしり詰まっているだけに、純粋に作品としても申し分ない超名作と言って差し支えないであろう。

     我々は今、まさに激動の時代を過ごしている。激動と言って連想されることは、これまでは主に戦禍や経済危機であった。もちろん今でも世界各地に戦禍や経済危機は存在するが、疫病によって世界中がこれほどの激動に巻き込まれるとは、多くの人は予想しなかったのではないか。

    ブリテンが本作品を世に送り出した時代は、史上2度目の世界大戦終焉という世界的な激動の大きな節目であり、これからまた人々の生活を、社会を、文化を育んでいこうというときであった。そのような意気込みが当時ブリテン本人にあったのかはわからないが、そのような時代に生まれたこの作品の演奏を、今、クラシック音楽愛好家だけでなく、広く子供たちにも披露することができることは、大変感慨深いと思う。

    この疫病の完全な収束はまだまだ見えないが、このような激動の時代にあっても文化は絶えないし、新しい世代が次々と発展させていくに違いないという意気込みを、演奏で表現できたら、これに勝る喜びはない。

  • 久石譲
    「千と千尋の神隠し」組曲

    「トンネルのむこうは、不思議の町でした。」

    日本が世界に誇る宮崎駿氏が原作・脚本・監督を務めた長編アニメーション「千と千尋の神隠し」は2001年7月20日に公開され、その人気は世界へと広がり、現在もその人気は衰える事を知らず、老若男女に愛される作品として根付いている。興行収入が318億円を越える人気作品であり、当時の日本映画としての興行収入歴代1位を達成、第52回ベルリン国際映画賞では金熊賞を受賞した。

    劇中音楽はこちらもまた世界的人気を誇る作曲家久石譲氏が音楽監督を担当。久石譲氏は「風の谷のナウシカ」以降宮崎作品の全ての音楽を手掛けており、千と千尋の神隠しは7作品目となる。

    作品の主人公、10歳の少女荻野千尋は両親と引っ越し先の街へ向かう途中森の中へと迷い込んでしまう。そこで奇妙なトンネルを発見し、両親はトンネルの中へと進んでいく。引き留めようとするも一人残されてしまう不安感でいっぱいになり、千尋もついて行ってしまう。トンネルを抜けるとそこは殺風景な草原が広がっており、少し先には街が見えた。するとどこからか美味しそうな匂いが漂ってきた。両親はその匂いにつられ人気の無い店で勝手に料理を食べてしまうが、その後罰として2人は豚にされてしまった。

    すっかり気が動転してしまった千尋はこの世界で暮らす少年ハクと出会い、「油屋」(ゆや)と呼ばれる八百万の神様達が集まる湯屋で働くこととなる。「油屋」の支配人湯婆婆に必死に頼み込みなんとか働く契約が出来たものの、その代わりとして名前を奪われ千尋は「千」と命名された。すぐ卑屈になりわがままを言う弱虫な性格の千尋が、油屋で働く過程で力強く成長していく様子が描かれている。沢山の出会いの中で支え、支えられ、その後の両親との再会、湯屋でお世話になった人達やハクとの別れ等、作品を通し人々の印象に残る作品となっている。

    今回お送りする「千と千尋の神隠し」組曲は、作曲者である久石譲氏がストーリーに沿った交響組曲として再構成された作品であり、それぞれの曲で映画の場面を思い出すことが出来る。2018年には久石譲氏本人が指揮とピアノソロを務め、新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラによって世界初演された。「あの夏へ」「竜の少年」等計10曲で構成されている大作となっている。曲中で注目すべき所は、東南アジアや琉球音楽を彷彿とさせる様なサウンド、エスニックな雰囲気がふんだんに取り入れられているので、是非耳を傾けて欲しい。まるで異世界に入り込んだ様な不思議な響きが全体を通した大きな特徴と言える。オーケストラとしては珍しい独特のサウンド、力強さと儚さが入り混じる久石サウンドを、映画のワンシーンを思い出しながら最後まで存分に楽しんで頂きたい。

    ちなみに私は、ハク様の握ったおにぎりをいつか食べたいなって思ってます♡

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後援

NPO法人ガバチョ・プロジェクト、立川市子育ていれかわりたちかわり実行委員会、合同会社Dear Mother

ムジカプロムナード 第16回演奏会 ファミリーコンサート チラシ

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