第14回演奏会in釜石&釜石音楽キャラバン

岩手県釜石市は県内でも有数の芸術文化の薫り高いまちであり、30年以上も市民の手による「ベートーヴェン第九演奏会」が続けられていたり、国内外の著名な演奏家が釜石を訪れたりしていました。その拠点となっていたのが釜石市民文化会館でしたが、東日本大震災により利用不可能となってしまいました。市民会館が使えない間も市民のみなさんの手によって、様々な形で芸術文化の火を絶やさぬべく活動が続けられてきました。我々ムジカプロムナードも2013年に第2回音楽復興祈念賞をいただき、フルオーケストラで釜石を訪れたことをはじめ、少人数でのキャラバン演奏やイベント参加を毎年行ってきました。

そんな釜石にいよいよ新しい市民ホールが完成しました。市民のみなさんが待ち望んでいたこのホールで、是非また演奏したいと今回のコンサートを開催することにしました。そしてホールだけではなく市内様々な場所で演奏をしたり地元の方々と交流をしたりする企画も考えました。

まず有志が前乗りし、釜石鵜住居復興スタジアムの建設現場の見学をしました。「釜石の奇跡」と称された釜石市立鵜住居小学校・東中学校の跡地に建設されたこのスタジアムは2019年ラグビーワールドカップで使用され、その後も市民のスポーツの拠点として活用されます。

キャラバン1

釜石市の隣町大槌町で、震災の被害を免れ地域の人の拠り所となった大念寺で開催させていただきました。こちらのお寺では定期的に音楽の練習やコンサートを開催しており、地域の皆様の交流の場となっています。我々も一度訪れたことがあり、有り難いことに来訪を楽しみにしてくださっていた方も大勢いらっしゃいました。室内楽を数曲お届けし、みなさんで「花は咲く」を歌って暖かな雰囲気に包まれた音楽会となりました。

コンサート

釜石市民ホールTETTOでのコンサートは、非常に感慨深いものでした。岩手県勢で唯一出場を果たした釜石南高校(現釜石高校)が吹奏楽コンクールで演奏した「だったん人の踊り」、釜石出身のピアニストと指揮者がいつか演奏したいと温めていたラヴェルのピアノ協奏曲、作曲者のお父様の棺に送られた楽譜を基に作られた「想送歌」、遠い地から故郷を思うメロディが紡がれた「新世界より」、-そのどの曲にも我々の想いが乗せられ、そして新しいホールに染み込んでいったと思います。

キャラバン2

ホールでのコンサートの興奮冷めやらぬ中、翌日は保育園でのキャラバン演奏です。釜石の未来を担う子供たちにも音楽を楽しんでもらいたいと企画したものですが、ホールのコンサートとはまた違った熱狂に包まれました。地元の方の作詞作曲による保育園の歌もみんなが大きな声で歌ってくれ、夢をかなえてドラえもんは飛んだり跳ねたり踊ったりしながら全身で楽しんでくれました。これからのキャラバンでもぜひこどもたちと一緒に楽しめるような企画を考えていきたいと思います。

釜石は、やはり東京からのアクセスが難しく、キャラバンやコンサートの開催には毎回苦労の連続です。しかしそのたびにたくさんの出会いがあり、そして釜石に来るたびに前向きに変わりゆく街並みに、やっぱりまた来たいと思ってしまうのです。今回初めて釜石を訪れたメンバーもたくさんいる一方、個人的にも何度も訪れているメンバーや、釜石にふるさと納税をしているメンバーもいます。またこの地で釜石のみなさんと音楽ができる日を楽しみにしています。

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