オーケストラにはさまざまな楽器が使われています。それらをどのようにステージ上に並べるか、さまざまなパターンがあるとをご存じでしょうか?
一般的に管楽器の並べ方、とくに木管楽器についてはほとんど確立していて変わりません。ステージ奥のひな壇に下手側(客席から見て左側)からフルート・オーボエ、その奥にクラリネット・ファゴット、さらに奥にはトランペット・トロンボーン・チューバ。ホルンは下手側の場合と上手側の場合があり、ホールの音響や曲によって変わります。
さて、今回注目したいのは弦楽器の配置です。一般的に見ることが多い弦楽器の配置(N響アワーや題名のない音楽会をイメージしてください)は、下手側から1stヴァイオリン、2ndヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、その後ろにコントラバス、という形です(ただ、チェロとヴィオラは入れ替わることがしばしばあります)。これは20世紀に指揮者ストコフスキーが広めた配置だといわれています。当時の録音技術では高音と低音を順番に並べるのが良かったそうです。
このサイトのトップページにある写真は当団の第5回演奏会の様子ですが、このとき我々は「対向配置(または両翼配置)」と呼ばれる配置を採用しました。実は前述のストコフスキー配置が広まる前は、このように1stヴァイオリンと2ndヴァイオリンを両サイドに並べる方式が一般的だったのです。
近年「ピリオドアプローチ」といって、作曲家の生きた時代の楽器や演奏法、配置などを追及するという演奏スタイルが広まっています。もちろん時代がまったく違いますからすべてを再現することは不可能にしても、作曲家の意図にできる限り近づくべく当団も努力していきたいと思います。
この対向配置にはどんなメリットがあるのでしょうか?よく言われるのは1stヴァイオリンと2ndヴァイオリンの掛け合いがある場合、ステレオ効果といって客席からは左右から代わる代わる音が飛んでくる、ということがあります。ベートーヴェンやチャイコフスキーなどの作品にしばしば登場しますね。
しかし物理的に離れた場所にいるヴァイオリン同士の掛け合いはなかなか難しく、「聞いて合わせる」のではなく指揮者やコンサートマスターを「見て合わせる」という必要があります。ムジカでは対向配置をここ数年採用しているので、だいぶ奏者も慣れてきたようですよ。
対向配置の中でも、1st→チェロ→ヴィオラ→2nd(チェロの後ろにコントラバス)のパターンと、1st→ヴィオラ→チェロ→2nd(チェロの後ろにコントラバス)のパターンがありますが、第7回演奏会では後者のパターンを採用しました。1stとチェロとコントラバスが下手側に集中すると、どうしても下手側からの音量が上手側を大きく上回ってしまうということがあります。それを補う意味や、ヴィオラを下手側に配置することでヴィオラの音量を効率よく客席に飛ばすことができる、といったメリットがあります(ヴァイオリンやヴィオラは構造上奏者から見て右側に音が飛ぶ)。
また、ファゴットやトロンボーン・チューバなどの低音管楽器とチェロ・コントラバスが連携を取りやすいというメリットもあります。 ムジカ第7回演奏会は、親しみやすい曲を楽しんでいただくとともに、ぜひオーケストラの配置(そして初めて下手側に座ったヴィオラ奏者たち)にもご注目ください!