「モモ」

ミヒャエル・エンデ「モモ」

Musica Promenadeの演奏会では、現在活躍中の作曲家の方による新作を積極的に取り上げています。第9回演奏会も、新作である館山幸子さんの「モモ」という作品を取り上げます。館山さんは昭和音大の大学院に在学中で、フルート奏者としてもアマチュアオーケストラ等で活動されており、昨年のオーケストラフェスティバルではわれわれと一緒に演奏してくださいました。そんな館山さんから今回演奏する「モモ」についてのメッセージをいただきましたのでここに紹介いたします。

この作品について

この曲は、ミヒャエル・エンデ作の同名の童話をもとに作曲しました。子供のころに読んだこの作品が、大人になった今でも心の中に残っていて、もう一度読んでみたくなり本を広げてみると、子供のころには見えなかったモモの世界がありました。この作品を読んだことがある人もない人も、この曲を通してモモの世界を感じてほしいと思います。

「モモ」のあらすじ

町の円形劇場に、身寄りのない浮浪児の少女「モモ」が住み着いた。モモには人の心のおくまで耳を傾け、本心を聞くことができる力があった。モモの周りには自然と人が集まり、町の皆は何かある度に彼女の元を訪れた。モモにとっては町の人皆が家族のような存在だった。

そんなモモたちの町にある異変が起きていた。時間貯蓄銀行の外交員を名乗る「灰色の男たち」の人知れぬ活動により、人々は時間の節約をするようになっていったのだ。灰色の男たちは「時間を貯蓄することで利子が付き、やがて大資本を使えるようになる」というが、持ち主に時間が戻ってくることはなかった。彼らは人間の時間を奪う「時間どろぼう」だったのだ。

モモは、時間を盗まれてしまった古い友人達を訪ね歩いたが、皆とても忙しく働いていてあまり話をすることができなかった。そんなモモのところにもある日、灰色の男たちがやってきて時間を盗もうとする。しかしモモは灰色の男達の本心を聞き出してしまい、町の皆の時間が盗まれていることを知ってしまったため、灰色の男達はモモを捕まえようとする。そこに甲羅の光る不思議な亀「カシオペイア」が現れ…。

「モモ」が教えてくれる大切なこと

このストーリは、忙殺されている現代人に対し、時間的な余裕をもったほうがいいという教訓を伝えているとされています。しかし、エンデが本当に言いたかったことは「時間」ではなく「お金」のことであり、経済システムに対する疑問らしいです。児童文学に限らず、様々な芸術の中には、時として世相を皮肉った内容のものがありますが、この作品も、大人が読んでみると考えさせられるような内容が含まれているかもしれません。

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